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レッドデッドリデンプション2はすごいゲームだが、相性がある?

メガヒットしたレッドデッドリデンプション2

世界的なヒットとなった前作からグラフィックや武器のカスタマイズ、NPCのAIなど、大幅な進化を遂げたレッドデッドリデンプション2。制作はGrand Theft Autoシリーズで有名なRockStar Gamesです。Grand Theft Auto 5(以下GTA5)は2013年の発売以来、その販売本数を伸ばし続け、2018年11月にはなんと1億本を超えるメガヒットとなりました。そんなGTA5の発売から約5年。 RockStar Games の新作となるレッドデッドリデンプション2 がいよいよ発売目前となり、世界中のゲーマーが大きな期待を寄せていました。そして全世界が待ちに待った本作が発売されたのは 2018年10月26日。その売り上げたるや、これまでのゲーム業界だけでなくエンターテイメント史に残る豪華絢爛なものとなりました。RockStar Gamesは、発売後3日間の売上が世界累計で7億2500万ドル(約820億円)に達したと発表し、エンターテイメント製品の初週の売上としては史上最高を記録したと伝えたのです。


ゲームソフト「レッドデッドリデンプション2」のアイキャッチ画像

引用元/レッドデッドリデンプション2 公式サイト

レッドデッドリデンプション2はアート作品

日本でもたくさんのゲームファンがプレイした レッドデッドリデンプション2。
では、本当に面白いゲームだったのでしょうか。

私にとっては手放しで面白いと言える作品ではありませんでした

このゲームに関してはしっかりと自分の物差しで測った意見をウェブ上に残すべきだと感じています。今回は少し辛口な表現も含まれると思いますが、正直な感想をお伝えします。

商業品として成り立つアート作品

レッドデッドリデンプション2を一言でいうなら「商業品であるアート作品」です。
通常、商業目的で発売されるモノは、消費者の利便性や要望に応える形で売りに出されます。ゲームで言うなら、ユーザーフレンドリーなインターフェイスを採用し、テンポが悪くなるパートを削り、触っていて心地よい操作性を追求するなど、プレイヤーが「気持ちよくなる」ことが重要視されます。しかし、レッドデッドリデンプション2にそのような気遣いは一切ありません。
分かりずらいHUD、古臭い戦闘システム、テンポの悪いキャラクター操作など、発売時期が近かったアサシンクリードオデッセイやスパイダーマンとは全く異なる、様々な面で不便な世界が広がっています。
それはなぜなのか。
その答えは、レッドデッドリデンプション2 は極限までリアルを突き詰めた結果生まれたゲームだからです。
驚くようなグラフィックス、まるで生きているような人間や動物のモーション、風になびく草木の滑らかな演出などから分かるように、本作の「リアル」は今までのゲームと一線を画します。レッドデッドリデンプション2の中には、西部開拓時代を生きる人々が本当に生き、暮らしているのです。


テレビゲーム「レッドデッドリデンプション2」のレビュー記事で使用する画像1

引用元/レッドデッドリデンプション2 公式サイト

辛口なことを書くはずが、大いに褒めてしまいました

今までのゲームでは実現不可能だったレベルの「リアル」をブルーレイディスク2枚に詰め込んだ本作は、同時にリアルにある「不便さ」も詰め込むことになりました。挙動の1つひとつに時間がかかり、移動は何もない草原をひたすら馬で走り続け、買い物は棚から商品を1品ずつ選ぶといった、まさにリアルなめんどくささ、不便さです。
ではなぜ、RockStar Games は、普通のテレビゲームで採用されることのない、面倒で時間のかかる仕様を多数取り入れたのでしょうか。それは本作が、彼らが本当に作りたいものを作った「アート作品」だからです。
レッドデッドリデンプション2は、アートです。
Rockstar Gamesが作りたかったのは、極限までリアルを追求した西部時代の生活シミュレーションゲームとも呼べる疑似体験です。市場の意見やユーザーの希望を優先したマーケットイン型の商品ではなく、作り手の理論や理想を優先しマーケットに送り込んだ、プロダクトアウト型の大型タイトルといえます。そして今まで発売されてきたアート型のゲームソフトと一線を画す点は、爆売れしたという点です。
とにかく売れたのです。冒頭で触れましたが、発売3日間の売り上げがエンターテイメント製品の初週の売上として史上最高を記録するほどです。

『レッド・デッド・リデンプション2』全世界出荷本数が1,700万本突破!前作が8年かけた販売本数を超える
引用元/Game Spark

SNSが発達し、個人が強い情報発信力を持つようになった現在、ゲームの小さなバグや望まれない仕様も、すぐにネガティブな情報として拡散されるようになりました。一瞬にしてマイナスな情報がウェブ上に並ぶと、商品の売り上げは瞬く間に下落します。どれだけパッチやアップデートで改善しても、時すでに遅しという事態も珍しくありません。このような情報化の背景を受け、ゲームメーカーは以前よりユーザーに寄り添う姿勢を重要視するようになりました。体験版やβテストの結果を受け、システムに大幅な改良を加えたり、購入後のレビューをもとに改善したりとフォローアップが手厚くなっています。
そんなトレンドを背景に発売されたのがレッドデッドリデンプション2 です。まったくユーザーに媚びない「俺たちが本当に作りたかった作品だ!共感できる奴らだけついてこい!」と言わんばかりの風貌で本作は現れたのです。そして歴史に残る売り上げを叩き出しました。

なんてカッコいいのでしょうか

SNSや口コミの不評を恐れてユーザーに媚びるメーカーも多い中、Rockstar Gamesはその名の通り、最高にロックで1等星のように輝く傑作をマーケットに投下したのです。そして歴史に名を残す作品として名誉を手にしました。

正直、あっぱれとしか言いようがありません。

、、、また盛大に褒めてしまいました。

しかし、どれだけ多くのユーザーが本作を評価しても、反対に全く楽しめなかった、面白いと思えなかったと感じたユーザーがいることも事実です。この意見の違いは、好きな音楽に対する議論に似ていると思います。「サザンは好きだけど音楽ジャンルはロックが好きだから、TSUNAMIは自分に合わないんだよね」といったように、作品の素晴らしさうんぬんではなく、個人の好みによってその評価が左右されています。前記した通り、レッドデッドリデンプション2はアート作品です。音楽や絵画がそうであるように、個人の好みによって素晴らしい傑作にも、耐え難い駄作にもなるのです。ピカソは好きだけどダリはあまり好きでない人がいるように、本作もプレイヤーの好みによって良し悪しが分かれるポイントが多数あります。

本作を苦手と感じたポイント

ここからは、私がレッドデッドリデンプション2をプレイして、苦手と感じたポイントをあげていきます。

1.西部劇という世界観

どのゲームにも言えることですが、そもそもの世界観や設定が好みでないとゲームに没頭できる可能性は目まぐるしく低くなります。私は西部開拓時代に全く思い入れや特別な感情がないので、「西部」「ガンマン」「リアリティ」と聞いた時点で期待度はかなり低くなりました。実際にプレイしてもその世界観に夢中になることはありませんでした。

2.モーションが遅く操作性が悪い

レビュー記事でも多く見かける意見です。1つひとつのモーションが遅いだけでなく、リアリティのある動きなのでバリエーションも豊富です。そのためアクション1つにかかる時間が大変長くなります。これはゲームの進行を遅らせ、全体のテンポの悪さにつながると感じました。

3.キャラクターの魅力

ゲームの世界観の話しと類似しますが、登場するキャラクターにあまり魅力を感じませんでした。西部時代を生きた人々はこんな出で立ちだったのか、と思う程度で、国産ゲームのように美男美女が出てくるわけでもなく、キャラクタークリエーションができるわけでもありません(レッドデッドオンラインは除きます)そして何よりもキャラクターへの愛着を軽減してしまっている要素は、次に上げる「字幕と音声」によるものだと思います。

4.英語音声と日本語字幕

超大型AAAタイトルとしては珍しい仕様ですが、本作は日本語の収録がありません。どんな場面でも英語音声と日本語字幕で進行します。そしてゲーム内の会話は、英語に精通している人でも理解するのに時間がかかるような難しい表現が多く登場します。(当時の言い回しや表現方法を再現しているのかもしれません)忙しく馬を操作している場面でも、多数の敵と銃撃戦を繰り広げている最中でも、日本人は字幕を読まなくてはいけません。この仕様に不便さを感じたユーザーは多かったのではないでしょうか。正直、操作が忙しい時に字幕など読んでいられないのです。車を運転しながらLINEを読んでいては事故にあいます。ゲーム内も同じことです。馬を操作しながら字幕を読んでいては木にぶつかってしまうのです。

5.ファストトラベル

オープンワールドのゲームとしてはこちらも珍しい仕様ですが、本作はファストトラベルによる移動にも制限があります。最初はどんな移動も自力で走るか、馬に乗るかです。ストーリーが進むと拠点からのファストトラベルをアンロックできますが、利用できるのは往きだけで復路は自力で帰ってこなくてはいけません。大変不便で移動に時間がかかります。それ以外にも列車と駅馬車を使う方法はありますが、使える場所は限定的です。ここで疑問が浮かびます。なぜ往きだけファストトラベルを利用可能にしたのでしょうか。徹底的なリアリティを追求するのであれば、ファストトラベルを完全に無くすこともできたはずです。これは憶測ですが、Rockstar Gamesの中でも「リアリティと利便性」に関する議論が幾度となく行われたのでしょう。そしてユーザーの利便性を考慮し、片道のみのファストトラベルは採用されたのではないでしょうか。

ユーザーとメディアとの間にある差異

以上が本作のプレイを通じ、私が苦手と感じたポイントです。
リアリティというパラメーターが異常値を叩き出している本作ならではの不便さや面倒くささが、ネガティブな側面として私には感じられました。

レッドデッドリデンプション2は「すごいゲーム」です。それはほかのゲームと全く異なるコンセプトのもの生まれた作品だからです。

そして、だからこそ、プレイヤーによって合う合わないが分かれる作品でもあります。

最後に、レッドデッドリデンプション2 に関する違和感について1点だけ触れ、この記事を終わりにしたいと思います。

ゲームメディアがネガティブなコメントを書かない違和感

正直なレビューが欲しい。
発売前も発売後も、レッドデッドリデンプション2に関してポジティブな言葉だけがゲームメディアに掲載されていました。しかし、Amazonレビューや個人のSNS、ブログを覗いてみると「自分には合わない」「操作性が悪い」など、評価全体の1/3はネガティブレビューなのです。これには非常に大きな違和感を抱きました。メディアは何かを恐れているような、ネガティブな意見はご法度かのような、全員いい子にお褒めの言葉だけを並べているような印象です。そしてレビュアーの間でも「レッドデッドリデンプション2を面白くないと言うヤツはゲームを分かっていない」といった雰囲気がありました。昔、映画マトリックスを見た全員が「面白かった」と答え、「意味が分からなかった」と答える人がいなかった事を思い出しました。「え、おまえこのゲームの面白さがわからないの?」といった、高く評価した側はゲーム通でよくわかった玄人、良さが分からないのは素人だ!といった雰囲気です。
世の中には、ワサビ抜きの寿司が好きな人や、ブラックよりも砂糖とミルクをたくさん入れたコーヒーの方が好きな人もいて、それは全く恥ずかしいことでも間違ったことでもないのです。どれだけ大企業が大金を投下して作ったゲームであったとしても、自分に合わないのであれば、それは自分にとって素晴らしいエンターテイメントではないのです。重要なのは、メディアや声の大きな人の意見に流されず、自分が経験したことを自分の物差しで測り、伝えることです。ゲームメディアの情報は、ユーザーがゲームの購入を検討する貴重な判断材料です。だからこそ、偏った記事ではなく、第三者のポジションで公平なレビューを書いてほしいと思います。
このサイトで、私も正直でありたい。そう思うのです。